研究課題:臨床研修医の基本的臨床能力、メンタルヘルス、志望専門科目、入院患者担当人数、種々の病院因子の関連性の精神科的視点での研究
1.研究の目的・方法
総合病院には、精神疾患の有無を問わず身体疾患を持つ患者が多数受診・入院する。包摂的な社会を目指すために、精神と身体を切り離さず、統合的に支援する仕組みが求められており、WHOは精神科医療を必要な人に届けるためには、プライマリケアに精神科医療を統合することが最も実行可能で重要なプランだとしている。臨床研修制度をもつ日本において、生涯学習や臨床研究を効果的に推進し、研修医自身の資質向上と患者の福祉享受を最大化することは、大きな課題かつ発展可能性のあるテーマである。申請者らは、自傷行為後の患者の救急搬送32,849件を検討し、身体科と精神科の入院ベッドが併設されている病院は応需困難のオッズが0.50で、病院前搬送時間も3.5分迅速になることを明らかにした。これは、身体科と精神科の共同が社会システム的に重要であることのハード面での重要性を示す結果である。一方、ソフト面でも、総合診療を志す医師による3ヶ月間の精神科ローテーションを通じて、精神科研修の意義や病院内での人的交流と研修システム構築について考察し、総合病院精神医学会誌に報告した。さらに、現在、初期研修医の短期の精神科ローテーションにおける研修のニーズ把握や研修システム構築について、倫理委員会の承認のもと、順天堂医院(単一施設)で精神科コンサルテーション・リエゾンチームでの経験を中心に初期研修医からのアンケート調査を実施している。これらの経験を踏まえ、質的にみえてきた現状と課題を質量混合研究に昇華させるため、本研究では量的な関連解析を行う。具体的には、臨床的な知識量、メンタルヘルス、志望専門科目、入院患者担当人数、種々の病院因子(精神科医療提供体制が有床かどうか、医療過疎地にあるかどうか、総合診療科の有無など)との関連を評価することを目的とする。申請者らの知る限り、精神科分野に着目して研修医自身の志望診療科・能力・資質と病院の施設特徴の関連を解析した大規模研究は世界的にみても存在しない。本研究は、精神科ローテーションが必修とされている本邦の臨床研修制度への提言に繋がりうる。
研究期間は、研究実施の許可日より2027年3月31日までとする。
2.研究の対象
2013年度〜2022年度GM-ITE受験者のうち、研究参加について同意が得られている方、及び、2023年度GM-ITE受験者のうち、研究参加について、十分な理解の上、研究対象者本人の自由意思による同意が得られた方
3.研究に用いる試料・情報の種類
(情報)2013年度〜2023年度GM-ITEで取得した学年、性別、医療機関名、試験結果、アンケート結果及び所属施設の情報(病院規模、立地、病院分類、年間入院患者数等)
4.研究に用いる試料・情報の提供を開始する予定日
2024年4月1日
5.研究に用いる試料・情報の提供を行う機関
特定非営利活動法人 日本医療教育プログラム推進機構
理事長 黒川 清
6.研究責任者及び研究に用いる試料・情報を利用する者の範囲
順天堂大学医学部 精神医学講座 准教授 田宗 秀隆(研究責任者)
群星沖縄臨床研修センター センター長 徳田 安春
順天堂大学 医学部医学教育研究室 先任准教授 西﨑 祐史
慶應義塾大学医学部 総合診療教育センター 助教 藤川 裕恭
順天堂大学 医学部医学教育研究室 助教 関根 美和
順天堂大学医学部 精神医学講座 主任教授 加藤 忠史
順天堂大学医学部 精神医学講座 先任准教授 伊藤 賢伸
順天堂大学医学部 精神医学講座 助手 原田 寛之
児玉医院 副院長 児玉 知之
虎の門病院分院 精神科 医長 佐々木 雅明
東京慈恵会医科大学精神医学講座 講師 曽根 大地
7.外部への試料・情報の提供
上記データを特定の個人が識別できないように匿名化し、データファイルとしてセキュリティが確保されたインターネット経由または、電子媒体(特定の関係者以外がアクセスできない状態)で提供を行う。
8.利益相反
本研究は、精神医学講座および医学教育研究室の研究費で賄われ、企業等からの資金提供はない。研究責任者の田宗と研究分担者の児玉、佐々木、曽根は、基本的臨床能力評価試験の試験問題作成委員としてJAMEPから謝金を得ている。研究分担者の西﨑は、基本的臨床能力評価試験プロジェクトマネージャーとしてJAMEPから謝金を得ている。また、研究分担者の徳田はJAMEPの理事を務め、基本的臨床能力評価試験の査読委員並びにセミナー講師としてJAMEPから謝金を得ている。しかし、研究者が企業等とは独立して計画し実施するものであり、企業等が研究結果および解析等に影響を及ぼすことはない。本研究の本学の研究者は、「順天堂大学利益相反マネジメント規程」および「人を対象とする医学系研究に係る利益相反に関する標準業務手順書」に従って、順天堂大学医学部医学系研究利益相反マネジメント委員会に必要事項を申請し、その審査を受けるものとする。各機関の利益相反マネジメント方法については、所属機関の規程および手順書等に則り、所属機関の利益相反委員会等に必要事項を申請し、その審査を受けるものとする。なお 、この研究の結果が特許権等の知的財産を生み出す場合、大学、研究者に帰属し、患者さんに帰属することはない。
9.お問い合わせ先
本研究に関するご質問等がありましたら下記の連絡先までお問い合わせ下さい。ご希望があれば、他の研究対象者の個人情報及び知的財産の保護に支障がない範囲内で、研究計画書及び関連資料を閲覧することが出来ますのでお申出下さい。
また、試料・情報が当該研究に用いられることについて研究対象者もしくは研究対象者の代理人の方にご了承いただけない場合には研究対象としませんので、「研究目的利用に関する不同意書」に必要事項をご記入いただき、下記の連絡先までお申出ください。その場合であってもそれを理由に不利益を被ることは一切ございません。
照会先および研究への利用を拒否する場合の連絡先:
特定非営利活動法人日本医療教育プログラム推進機構
東京都品川区大崎1-19-10 大崎KIビル6F
info@jamep.or.jp
研究責任者(研究代表者):
順天堂大学医学部 精神医学講座 准教授 田宗 秀隆